コロナ禍で急拡大の「マッチングアプリ」市場 新規参入のテンポ鈍化、“安全“投資で差別化
「婚活・恋活マッチングアプリ」企業動向調査
20代、30代の若者を中心に、恋活や婚活、恋愛の真面目な出会いを求めるマッチングアプリの利用が広がっている。マッチングアプリの運営会社はコロナ禍を境に急増し、社数は6年間で5.6倍になった。2019年3月末の5社から、2025年3月末は28社と6年間で大幅に増えた。売上高合計(判明分)は342億円だった
子ども家庭庁の令和6(2024)年度「若者のライフデザインや出会いに関する意識調査」によると、既婚者の結婚相手と出会った場所・機会は、マッチングアプリが25.1%で最多だった。
次いで、職場や仕事関係・アルバイト先20.5%、友人や兄弟姉妹の紹介9.5%が続き、他人が介在しない自由な出会いを求める若者に受け入れられているようだ。
利用者の意識の変化に加え、スマートフォンの普及が追い風になったほか、コロナ禍での三蜜回避、人流抑制も利用拡大を後押ししたとみられる。最近は40代から60代の出会い・婚活マッチングアプリも増え、年代を問わずニーズが広がっている。
ただ、サービスの普及に伴い、運営会社は他社との差別化を図る一方で、個人情報保護や犯罪などへの安全対策の強化も課題になっている。
マッチングアプリは、初期投資が小資本でも参入が可能で、コロナ禍で事業者数が急増した。だが、ビジネスサイクルは早く、すでに生き残りをかけたフェーズに入っている。2024年9月、東京都が婚活支援事業の一環としてAIマッチングシステム「TOKYO縁結び」をリリースした。こうした自治体を巻き込んだ競合は議論もあるが、業界構造の転換を促す可能性もある。
売上高が判明した18社の売上高合計は342億円だった。売上上位5社で全体の75%のシェアを占めている。歴史の浅いマーケットで、安全面への取り組み強化が必須なだけに、オンライン身分確認やサービス監視など、費用負担の重いサービス整備への対応が大手の寡占化を促す可能性もある。
※ 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(約440万社)から、「婚活・恋活マッチングアプリ」を事業内容に含む企業を抽出、分析した。
運営会社数は2019年から5.6倍増
マッチングアプリの運営会社は、2019年の5社から2024年は28社と5.6倍に増えた。とくに、コロナ禍の2021年から伸びが顕著になっている。これはコロナ禍で出会いの場が減少したことに加え、「出会い系」のマイナスイメージからクリーンなコンテンツへ徐々に認知されてきたことが市場拡大につながったとみられる。ただ、2025年は社数ベースの成長は止まっており、安全性の強化を求められる中でニーズの停滞や淘汰の兆しも注目される。
資本金100万円未満が最多
資本金別では、100万円未満が8社(構成比28.5%)で最も多く、次いで、100万円以上500万円未満が7社(同25.0%)で続く。
500万円未満は合計15社(同53.5%)で半数以上を占め、小資本での参入が多いことを示している。
1億円以上は(株)サイバーエージェントの子会社、(株)タップル(TSRコード:300377070、資本金1億2,000万円)の1社のみ。
業歴別 10年未満が8割
業歴別では、3年以上10年未満が12社(構成比42.8%)でトップ。次いで、1年以上3年未満が7社(同25.0%)、1年未満が4社(同14.2%)で、10年未満が合計23社(同82.0%)と8割を占めた。
設立が最も古いのは、「ハッピーメール」を運営する(株)アイベック(TSRコード:870301268)の1981年。設立当初は景品卸からスタートし、業態転換を重ね、2000年頃から現在の主力事業「ハッピーメール」を始動した。
代表者の85.7%が男性
代表者の性別は男性24社(構成比85.7%)、
女性4社(同14.2%)で、圧倒的に男性が多い。
東京商工リサーチの保有する企業データの経営者情報で社長の女性比率は15.2%(2024年10月)で、ほぼ同水準だった。
現在、マッチングアプリは「男性主導」の傾向が強いが、ユーザーの多様性やニーズの広がりで、女性視点のサービスが成長につながるかもしれない。
従業員別 5人未満が67.8%
従業員別は、5人未満が19社(構成比67.8%)で約7割を占めた。少人数、低コストでスタートし、運営しやすい構造が表れた。
一方、従業員が少ないことでサポート体制やサービスの拡張性に限界が出る可能性もあり、今後の成長に向けた組織強化が課題といえそうだ。