効率的なコンプライアンスチェックとTSRのソリューション

「コンプライアンスチェックの基礎知識」でご説明している通り、アンチ・マネー・ローンダリング(AML)やテロ資金供与対策(CFT)などのコンプライアンス関連リスクは、金融機関をはじめとした特定事業者は当然のことながら、国内外問わず事業を展開している一般事業会社は少なからず意識しておく必要があると言えます。
しかし、すべてのリスクに最大限のリソースをかけて対応していくのは現実的ではなく、取引先の業種、取引金額、取引先のリスク度合いなど、自社にとってのリスクとは何かを見極めたうえで濃淡をつけて効率的にチェックしていく、「リスクベース・アプローチ」が重要だと考えます。
そこで、今回は効率的な業務フローや、事業分野ごとに重点を置くべきポイントなどをご紹介いたします。

チェック業務フロー

まず最初に、チェック業務の効率的なフローをご紹介いたします。おおまかな流れとしては実態特定、スクリーニング、記録の結果、評価、そしてこれらの継続的な実施となります。取引先からの自己申告情報やインターネット上の情報など、自社で収集した情報だけでチェックするには情報が不足していたり、正確性の担保が取れないケースも多いため、TSRやDun & Bradstreet(D&B)といった第三者の客観的な情報も活用することで、効率よく情報を収集すると共に属人性を排除した客観的な判断が可能となります。

チェック業務フロー

①実態特定

チェック対象となる企業の情報を収集します。情報収集は商号、役員、業種、株主など当該企業の情報はもちろんのこと、実質的支配者や利害関係にある企業・個人、資本構造など「誰がその企業を支配しているのか」を明確にしておく必要があります。

②スクリーニング

収集した情報を元に制裁リストやメディア情報などとスクリーニングをおこない、ネガティブ情報が無いかをチェックします。当然ながらこれらのソースは正確かつ網羅的なものでなければいけません。

③自社ポリシーに応じたリスク評価と結果の記録

①~②の結果を踏まえ、取引先のリスクを評価し取引の開始、継続、停止などを検討します。また、当局の監査等へのエビデンスとして、チェック結果並びに評価結果を記録します。

④継続的な実施

最初のチェック時には問題が無くても、その後に資本構造が変わったり制裁リストに掲載されたなど、リスクが高まる重要な変化が発生する可能性もあります。その変化を見逃さないためにも、定期的にチェックを実施したり、モニタリングで重要な変化が発生した際は通知を受け取れるようにしておくなど、継続的に実行していくことが重要です。

事業分野ごとの各種法規制や国際ルールへの対応度合い

次に、どのような点に重きを置いてチェックしていくべきかを事業分野ごとにご紹介いたします。
事業内容、海外進出している国、コンプライアンスポリシー等は企業ごとに異なるため、どこに注力しなければいけないかは一度社内で整理しておくことをおすすめいたします。もし不明な点がありましたらTSRからご提案することも可能です。

必須「赤」重要「黄」やや重要「緑」

分野 AML/CFT 取引先リスク 贈収賄防止 IPO
主な法規制、枠組み、ガイドライン等 ・犯収法
・EU AML指令、等
・外為法
・OFAC、EU、国連等制裁、等
・FCPA
・UK Bribery Act、等
有価証券上場規程、等
事業分野 特定事業者 金融機関 必須 必須 やや重要 やや重要
その他 (クレジットカード事業者、宅地建物取引業者等) 必須 必須 重要 やや重要
海外展開する一般事業会社 重要 必須 必須 重要
国内展開中心の一般事業会社 やや重要 やや重要 やや重要 重要

・AML/CFT

金融機関等の特定事業者は、犯罪収益移転防止法(犯収法)で犯罪組織への送金等を防ぐことを目的とした適切な対策を取るよう定められているため、対応は必須です。また、一般事業会社でも海外展開をしている場合には注意しておくべきです。

・取引先リスク

取引先が制裁リストに掲載されている場合、自社も制裁を受けたり、取引先から本来得られるはずの売上が銀行から入金されないなど不利益を被る可能性があります。これは、海外展開しているすべての企業がチェックしておかなければいけません。

・贈収賄防止

特に新興国においては政府・公共団体と企業が癒着しているケースが多くなっています。例えば海外企業とインフラ関連の取引をおこなっている場合などは入念にチェックしておく必要があります。

・IPO(上場審査)

上場審査のガイドラインにおける企業の健全性の審査にて、反社会的勢力の経営活動への関与を防止するための社内体制の整備が含まれているため、上場を目指す国内企業は対策が求められます。

TSRのコンプライアンスソリューション

TSRでは様々なコンプライアンス関連サービスをご提供しておりますが、どのサービスがどのような課題を解決できるのかをご理解いただくため、ここではそれぞれのサービスの特長をご紹介いたします。

TSRのコンプライアンス関連サービス一覧

サービス名 主な提供形態 主な対象 主な機能 概要
tsr-van2 オンライン 国内 実態特定
スクリーニング

企業名や人名等、取引先に関係するチェック対象情報の網羅的な収集から、ネガティブなメディア情報の有無確認まで、国内企業を個別で詳細にコンプライアンスチェックしたい場合に最適。

TSRコンプライアンスチェック Execl 国内 データベース整備
実態特定
スクリーニング
取引先リストにTSR保有の企業情報を付与して整備すると共に、メディア掲載の有無を付与。自社データベースの整備とコンプライアンスチェックをまとめておこないたい場合に最適。
コンプライアンス・ステーション®UBO オンライン
(データ出力可)
国内 実態特定 犯収法に準じた実質的支配者の特定、資本系列、役員などの情報を取得。国内企業の実態特定を一括しておこないたい場合に最適。
グローバルコンプライアンスオンライン管理サービス(D&B Risk Analytics - コンプライアンス・インテリジェンス) オンライン
(データ出力可)
国内/海外 実態特定
スクリーニング
自社ポリシーに応じたリスク評価と結果の記録
継続的な実施
取引先の実態特定、メディアや制裁リスト等のスクリーニング、モニタリング&アラート、各種リスク指標の取得など、コンプライアンスリスク管理を効率的にする機能を網羅。多くの取引先があり、継続的なコンプライアンスチェックをしたい場合に最適。
D&B Onboard オンライン
(データ出力可)
国内/海外 実態特定
スクリーニング
企業情報、UBO、資本系列、メディアや制裁リスト等のスクリーニングなどあらゆる情報や機能をオールインワン。包括的なコンプライアンスチェックをしたい場合に最適。
World Complianse オンライン
(データ出力可)
国内/海外 スクリーニング メディアや制裁リスト、PEPsなど240カ国超、35,000以上の公知情報とスクリーニング。国内外の企業のスクリーニングを一括でおこないたい場合に最適。
KYC Batch Excel、text 国内/海外 実態特定 取引先リストに、D-U-N-S® Numberをキーとして企業情報、UBO、役員、資本系列などの情報を付与。国内外の企業の実態特定を一括でおこないたい場合に最適。

TSRでは事業内容やポリシーなどをお伺いしたうえで、お客様ごとに異なる課題に対しベストなソリューションをご提案いたします。これからコンプライアンスチェックを始めたい方、見直しをご検討されている方など、少しでも興味がありましたら是非お気軽にお問い合わせください。

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