海外与信管理で重点チェックすべき3つのリスク Vol.2 コンプライアンスリスク

「海外企業の与信管理の必要性」でご説明している通り、海外企業との取引において特に慎重な判断が求められる取引検討時、リスク悪化・要注意先特定時には、「デフォルトリスク」「コンプライアンスリスク」「カントリーリスク」という3つのリスクをチェックすることが重要です。
本ページではコンプライアンスリスク、つまり取引先の企業が制裁リストに掲載されていたり、法令違反などを犯すことで自社にもその影響が及ぶリスクについて、実際に起こった例を交えながら気をつけるべきポイントをご紹介いたします。

【実例】不十分なコンプライアンスチェックが引き起こした送金停止

まずは実例として、海外企業との取引において資本系列の十分な確認を怠ったことにより発生した送金停止のケースをご紹介いたします。
とある企業A社が、海外の取引先B社からの入金がいつまでたっても完了しないため銀行に問い合わせたところ、銀行から「取引先B社の株主であるCが米国の制裁リスト「OFAC SDNリスト」に登録されていたことがわかったため、貴社への送金をストップした。」との返答がありました。その構図は以下の通りです。

送金停止の構図

スクリーニングで判明「50%ルール適用により制裁対象」

ここでポイントとなるのは、B社自体はSDNリストに掲載されていないという点です。取引開始時にB社のSDNリスト掲載の有無をチェックしていても、B社自体は掲載されていないため、問題無いと判断され取引を開始できてしまうことになります。
しかしSDNリストでは、一人もしくは複数のSDNリスト掲載者が直接・間接的に50%を超える株式を保有している企業も制裁対象とする、いわゆる「50%ルール」が定められています。今回のケースにおいては、銀行がA社への送金前にB社をスクリーニングしたところ、B社の株を50%以上保有し実質的に支配しているCがSDNリストに掲載されており、B社も制裁対象に該当していることが判明しました。そのため、この銀行は米国の制裁対象からの送金依頼を受けることで自らも制裁対象となるリスクが高いため送金を停止しました。そして、A社は本来得られるべき売上や利益を失ってしまう結果となりました。

このように、コンプライアンスリスクのチェックにおいては、その企業単体だけではなく資本構造を明確にした上で対象となる企業や人物を包括的にスクリーニングしていくことが非常に重要であると言えます。

コンプライアンスリスクチェックで重要なポイント

新規顧客のコンプライアンスリスクをチェックする際、多くおこなわれているのはインターネット検索や新聞などの記事検索を通じて当該企業をチェックするケースです。しかし、先ほどご紹介した事例の通りこれだけでは実質的支配者や利害関係のすべてをチェックすることはできません。また、チェック元となる情報ソースも正確かつ最新のものを用いて広範にスクリーニングする必要があります。
これらを踏まえ、コンプライアンスリスクチェックで重要なポイントを2点ご説明いたします。

チェックポイント1 【実態の特定】チェックすべき企業や人物の洗い出し

コンプライアンスリスクのチェック対象は当該企業だけでなく、当該企業の実質的支配者や企業の親子関係など実態を明らかにした上で関係する企業や人物に対し広くおこなわなければなりません。

実態特定のイメージ

「実態特定前:取引先の先に存在する“真にチェックすべき対象”がわからない状態」「実態特定後:取引先の先にどんな企業や人物が存在するのかを特定し、スクリーニング対象を洗い出す」

取引先の親会社の実質的支配者が制裁リストに掲載されている場合、取引先も制裁対象となるケースがあります。また、例えば子会社や孫会社が制裁リストに掲載されているという場合、取引先自体は制裁対象ではありませんが、“制裁対象企業を系列に抱える企業“であることに変わりはなく、そのような企業と取引をおこなうことで自社にも風評被害が及ぶなど、何かしらのリスクを被る可能性があることは認識しておかなければなりません。

チェックポイント2 【スクリーニング】対象のコンプライアンスチェック

実態を特定しても、スクリーニングに漏れがあると結局は制裁対象企業や不祥事などを起こした企業など、コンプライアンスリスクを抱える相手と取引を開始してしまう危険性があり、コンプライアンスチェックが不十分なものになってしまいます。そうならないためには、できる限り多くの情報ソースを用いてもれなくスクリーニングしなければなりません。スクリーニングすべき情報ソースとしては、メディア情報、EUやSDNリストなど世界各国の制裁リスト、PEPsなど多岐に渡ります。

スクリーニングすべき情報ソース

  • メディア媒体(新聞・雑誌)に掲載されている事件や不祥事などのネガティブ記事
  • EU制裁リスト、米国SDNリストなど、世界各国の制裁リスト
  • 政府高官など重要な公的地位にある者(PEPs)情報
  • 国有企業情報
  • その他インターネット上の諸情報

ここまで、実態特定やスクリーニングの重要性についてご説明いたしましたが、これらを自社が保有する情報やツールだけでおこなうことはリソースや正確性の面で現実的には難しいものと思われます。TSRでは、コンプライアンスリスクのチェックにお役立ていただけるサービスを多数用意しており、お客さまのコンプライアンスリスクチェックの課題解決をサポートいたします。

コンプライアンスリスクをチェックできるサービスのご紹介

TSRが提供しているコンプライアンス関連のサービスの一覧です。TSRでは多くのサービスをご提供しており、お客さまごとに異なる課題やご要望に柔軟に対応いたします。少しでも興味がありましたら是非お気軽にお問い合わせください。

TSRのコンプライアンス関連サービス一覧

サービス名 主な提供形態 主な対象 主な機能 概要
tsr-van2 オンライン 国内 実態特定
スクリーニング

企業名や人名等、取引先に関係するチェック対象情報の網羅的な収集から、ネガティブなメディア情報の有無確認まで、国内企業を個別で詳細にコンプライアンスチェックしたい場合に最適。

TSRコンプライアンスチェック Execl 国内 データベース整備
実態特定
スクリーニング
取引先リストにTSR保有の企業情報を付与して整備すると共に、メディア掲載の有無を付与。自社データベースの整備とコンプライアンスチェックをまとめておこないたい場合に最適。
コンプライアンス・ステーション®UBO オンライン
(データ出力可)
国内 実態特定 犯収法に準じた実質的支配者の特定、資本系列、役員などの情報を取得。国内企業の実態特定を一括しておこないたい場合に最適。
グローバルコンプライアンスオンライン管理サービス(D&B Risk Analytics - コンプライアンス・インテリジェンス) オンライン
(データ出力可)
国内/海外 実態特定
スクリーニング
自社ポリシーに応じたリスク評価と結果の記録
継続的な実施
取引先の実態特定、メディアや制裁リスト等のスクリーニング、モニタリング&アラート、各種リスク指標の取得など、コンプライアンスリスク管理を効率的にする機能を網羅。多くの取引先があり、継続的なコンプライアンスチェックをしたい場合に最適。
D&B Onboard オンライン
(データ出力可)
国内/海外 実態特定
スクリーニング
企業情報、UBO、資本系列、メディアや制裁リスト等のスクリーニングなどあらゆる情報や機能をオールインワン。包括的なコンプライアンスチェックをしたい場合に最適。
World Complianse オンライン
(データ出力可)
国内/海外 スクリーニング メディアや制裁リスト、PEPsなど240カ国超、35,000以上の公知情報とスクリーニング。国内外の企業のスクリーニングを一括でおこないたい場合に最適。
KYC Batch Excel、text 国内/海外 実態特定 取引先リストに、D-U-N-S® Numberをキーとして企業情報、UBO、役員、資本系列などの情報を付与。国内外の企業の実態特定を一括でおこないたい場合に最適。

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