M&A支援機関、大企業は1割 情報開示と売り手に寄り添った支援を
「M&A支援機関」動向調査
中小企業庁の「M&A登録支援機関データベース」(以下、支援機関DB)の登録法人は2,166社に達した。このうち、法人番号が確認できた2,147社の分析では、資本金1億円未満が88.4%、業歴10年未満がほぼ半数と、設立から日が浅く、中小・零細事業者が多くを占めていることがわかった。
東京商工リサーチ(TSR)の企業データベースとマッチングした支援機関を分析・調査した。
代表者の高齢化が進み、事業再生の一手法として、M&A市場が近年拡大している。今回の調査で、支援機関は設立から日が浅い事業者が多いことがわかったが、経験やノウハウ不足と同時に、短期的な利益を追求する支援機関の存在も指摘されている。
M&A業界では2025年1月、不適切な買い手と認識しながら買収を成立させたとして(株)M&A DX(TSRコード:027150330、名古屋市)が、M&A支援機関の取消処分を受けた。コンプライアンス遵守は当然だが、M&A支援機関は積極的な情報開示とガバナンス(企業統治)への取り組みが求められる。
中企庁は、2015年にM&Aの手続き等を記載したガイドラインを策定し、2019年に「第三者承継支援総合パッケージ」を策定。2021年にはM&A支援機関に係る登録制度を創設した。
支援機関DBには、2025年2月時点でフィナンシャル・アドバイザー及び仲介業者2,841件(法人2,166件、個人企業675件)が登録されている。M&A支援や仲介業務での事業存続には年間数件以上の実績が必要になる。M&Aの潜在ニーズはあっても、事業譲渡に抵抗感を持つ経営者も多く、支援機関のマーケットの顕在化には至っていない。さらに、「悪意ある買い手」による買収も社会問題化している。中企庁はガイドラインを改定し、2025年1月に最新の遵守宣言の提出がなかった78社の支援機関登録を取り消している。
※本調査は、中企庁が公開する「M&A登録支援機関データベース」から2025年2月時点の支援機関を対象に、法人番号が確認できた2,147社とTSR企業データベースをマッチングし、分析した。
※資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義した。
資本金別 1千万円未満・個人が68.1%
支援機関DBに登録された2,147社の資本金を分析した。最多は1百万円以上1千万円未満の1,027社(構成比47.8%)。次いで、1千万円以上5千万円未満362社(同16.8%)、1億円以上247社(同11.5%)、個人企業他237社(同11.0%)だった。
個人企業他には、税理士法人など資本金が登記されていない法人も含む。
M&A支援機関は、資本金1億円以上は1割にとどまり、中小・零細事業者が圧倒的に多い。
業歴別 10年未満が約半数
設立年が判明した2,144社を分析した。最多は10年以上50年未満の929社(構成比43.3%)だった。次いで、5年以上10年未満の590社(同27.5%)、5年未満の435社(同20.2%)、50年以上100年未満の151社(同7.0%)と続く。
100年以上の39社(同1.8%)は、いずれも大企業で、設立10年未満(1,025社)は、中小企業が998社(構成比97.3%)と大半を占めた。
社長の年代別 60代が3割超
社長の年齢が判明した629社では、社長の平均年齢は57.82歳だった。年代別の最多は60代の223社(構成比35.4%)だった。次いで、50代の179社(同28.4%)、40代の109社(同17.3%)、70代の79社(同12.5%)と続く。
TSRの「全国社長の年齢」調査(2月17日公表)で、2024年の全国社長の平均年齢は63.59歳(前年63.35歳)だった。M&A支援機関の社長(57.82歳)は5.7歳若い。
M&A支援機関の社長は、仲介会社を経て比較的若く独立するケースが多く、30代以下から60代のすべてのレンジで全国平均を上回った。
また、70代以上の社長は、資本金1億円以上の大企業の割合が22.7%(18社)であり、金融機関などを含む大企業がM&A支援機関の登録を進めている。
2024年度4-2月の「後継者難」倒産は409件で、前年同期の403件を上回っている。また、TSRの2024年「後継者不在率」調査(2024年11月8日公表)では、後継者不在率は62.15%で前年(61.09%)から1.06ポイント上昇した。同族承継や内部昇進が難しい企業は、廃業か外部招聘、事業譲渡が選択肢となるため、M&A仲介を中企庁も支援している。
だが、2019年に策定された「第三者承継支援総合パッケージ」で打ち出した10年間で60万者(社)の第三者承継(6万社/年)の実現には届いていない。支援機関の登録拡充でM&Aを推進することは必要だが、今回の調査では支援機関は大都市圏に集中し、中小規模業者が中心であることがわかった。
M&Aの推進には、仲介手数料を含め、オープンな情報と売り手に寄り添った細やかな将来設計を描くことも大切だ。支援機関が目先の実績確保を優先すると、M&A市場の広がりは一過性にとどまる可能性もある。それぞれの強みを活かしながら、寄り添った支援をどのように実現するかをM&A支援機関は問われている。