• TSRデータインサイト

2024年度「介護事業者」倒産 最多の179件 前年度から3割増、報酬改定の「訪問介護」が半数

2024年度「老人福祉・介護事業」の倒産調査


 2024年度の介護事業者(老人福祉・介護事業)の倒産が179件(前年度比36.6%増)と、過去最多を記録した。コロナ禍と大型の連鎖倒産が発生した2022年度の144件を大幅に上回った。利用者獲得の競争やコロナ禍のダメージ、人手不足、介護用品の高騰などが重なり、負担が増していることが背景にある。

 業種別は、介護報酬のマイナス改定やヘルパー不足などが影響した「訪問介護」が86件(同21.1%増)と全体の約半数(48.0%)を占め、過去最多を記録した。また、熾烈な競争が続くデイサービスなど「通所・短期入所」は55件(同34.1%増)で過去2番目の高水準。低価格の新規参入も多い「有料老人ホーム」は17件(同112.5%増)で2.1倍に増加し過去最多を更新した。

 介護保険法が施行された2000年度以降の介護事業者の倒産を集計した。
 原因別では、「売上不振(販売不振)」が最多の133件(前年度比27.8%増)。次いで、赤字累積の「既往のシワ寄せ」が15件(同150.0%増)、甘い事業計画など「事業上の失敗」が15件(同400.0%増)と、売上不振以外の原因も目立ち始めた。
 また、個人企業他を含む資本金1,000万円未満が157件(構成比87.7%)、従業員10人未満149件(同83.2%)、負債1億円未満144件(同80.4%)と小・零細事業者の淘汰が進行している。

 厚生労働省によると、2024年9月の介護職員の平均給与は33万8,200円と報酬加算などで1万3,960円増えたが、全産業平均と比べると月額8万3,000円低く、人材獲得は劣勢が続く。人手不足の解消や運営の効率化は、事業者単体での対応には限界がある。処遇改善や物価高への対応、システム面への投資補助など、国の支援拡充がなければ2025年度も倒産増は避けられないだろう。

※ 本調査は、「老人福祉・介護事業」を対象に集計した。内訳は、訪問介護事業、通所・短期入所介護事業、有料老人ホーム、その他に分類。本調査は、介護保険制度が始まった2000年から、負債1,000万円以上の倒産を集計している。

「老人福祉・介護事業」の倒産件数(年度推移)

2024(令和6)年度 老人福祉・介護事業 都道府県別倒産状況

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

 「トランプ関税」 企業の52.3%が「マイナス」 「賃上げ見送り」や在庫調整、設備投資の減少も

東京商工リサーチは4月1日~8日、企業対象の「トランプ関税」に関するアンケート調査を実施した。 相互関税が「マイナス」と回答した企業は52.3%と半数を超えた。一方、「プラス」の回答はわずか1.3%にとどまり、規模・産業を問わず、経営への打撃を懸念する企業が多い。

2

  • TSRデータインサイト

中小企業の賃上げ率「6%以上」は9.1% 2025年度の「賃上げ」 は企業の85%が予定

2025年度に賃上げを予定する企業は85.2%だった。東京商工リサーチが「賃上げ」に関する企業アンケート調査を開始した2016年度以降の最高を更新する見込みだ。全体で「5%以上」の賃上げを見込む企業は36.4%、中小企業で「6%以上」の賃上げを見込む企業は9.1%にとどまることがわかった。

3

  • TSRデータインサイト

全店休業のミュゼプラチナム、「新生ミュゼ」構想が判明 ~ 運営会社MPH・三原孔明氏インタビュー ~

運営会社や株主がたびたび変更されるなか、脱毛サロン・ミュゼプラチナムに注目が集まっている。ミュゼプラチナムは現在、MPH(株)(TSRコード:036547190、東京都港区)が運営している。だが、

4

  • TSRデータインサイト

脱毛サロン「ミュゼプラチナム」3度の運営会社が変更 ~「船井電機」倒産余波の真相~

船井電機(株)が破産開始決定を受けて以降、脱毛サロン「ミュゼプラチナム」への関心が高まっている。これまでの運営会社の変遷をまとめた。

5

  • TSRデータインサイト

丸住製紙(株)~ 倒産した地元の“名門”製紙会社の微妙な立ち位置 ~

2月28日に新聞用紙の国内4位の丸住製紙(株)(四国中央市)と関連2社が東京地裁に民事再生法の適用を申請してから2週間が経過した。負債総額は約590億円、債権者数は1,000名以上に及ぶ。愛媛県では過去2番目の大型倒産で、地元の取引先や雇用への影響が懸念されている。

TOPへ